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敵はきみたちを怖れている。きみたちはそのことを裏切ってはならない。

ルネ・シャールに久々に出会った。
というより、他の人が書く彼についての文は初めてだ。

筆者は、長田弘。
本のタイトルは、『読むことは旅すること…私の20世紀読書紀行』。平凡社刊の大型本。

その分厚い一冊の中に、シャールについての、短い文章を見つけた。
薄い空気の中で見つけた宝物のように、
大切なこの詩人について書かれた文を見出したことは、
望外なよろこびを、昨夜不意打ちのように私にもたらした。

多分、今はとてつもない危機的な状況に私達はいる。
少なくとも、私はそう。相方は、感じ方は多少異なる。
状況のとらえ方は非常に近くとも、感じ方の違いで、彼女は持ちこたえるから。

しかし、こういうときこそ、私には本物の詩の言葉が必要だ。

そんな自分に、長い時間をかけて、
まるでとてつもない回り道でもしたかのように、立ち戻ったことを、
今はむしろ歓迎すべきときなのかもしれない。

言葉は、私の表現の根幹にある。
悲しみや怒り、
よろこびや楽しみ、
そんなものの向こうにすらいける、言葉の力がまだあると思えるとき。


長田弘の一文からの引用。

 長いあいだわたしは、それでも詩を書くのは、わたしたちにはこの世に問いかけるべき充分な理由があるからだ、
とみならわそうとしていたと思う。しかし、シャールによれば、それは間違いなのである。そうではなく、どのような場所、
どのような状況にあっても、一人のわたしはこの世に対して応えるべき理由をもつ、と公然と信じることが、
わたしたちには必要なのだ。

  敵はきみたちを怖れている。きみたちはそのことを裏切ってはならない。

 詩人はきっぱりと断言する。問われているのは、誰でもないのだ。わたしたち自身だ。わたしたちにみずから応えねばならない充分な理由があるとき、わたしたち自身のほかに答を請求することはできないから、わたしたちは言葉を必要としている。
 詩の言葉は、人びとが日々にもつ沈黙にできるかぎり近づくための言葉ではない。人びとのもつ沈黙のなかから、一人の私が持ちかえれるだけの言葉であるにすぎないのだ。はじめに言葉があるのではない、とシャールは言う。はじめに恐怖がある。ついで、恐怖の対象に対する抵抗。それから、言葉だ。
 一人のわたしはこの世にあって、確かにさまざまな「恐怖」によって危うくされている、ただそれだけの存在であるかもしれないが、そうであればこそ、詩人に言わせれば、一人のわたしは自分の負っている危うさというものを、みずから活用できるのでなければならないのだ。一人のペシミストの勇気をもって。


永瀬清子さんは、けっしてペシミストではありえない、自身のことを
彼女らしい、やわらかい言葉で書いていた。
それは女であり、母である彼女には欠かせないことであると断言していた。

私が心酔したシャールのことを、長田弘氏はペシミストと言い、
彼の志を「ペシミストの勇気」と言うのか。
いや、多分、この逆説こそが深い意味をなしているのかもしれない。
そう、私ケイコは考える。

引用を続ける。

 詩のとばぐちでぐずぐずしていた一人にとって、シャールのそうしう言葉は、端的に過ぎて痛いほどだったが、
もしそれから、「ありうべきしあわせを、証しもなしに信じる」なんてできることだろうかという疑いに強くとらわれつづける
ということがなかったら、詩人の見てくれをもつことなく、他の人たちのあいだで単独に生き、それでも詩を書くことを、
自分に選ぶということはたぶんなかった、と思う。その言葉から多くをうけたと思っても、わたしはシャールという詩人に
ついて、結局その詩のいくつかのほかは多くを知らないのだが、見も知らぬこのプロヴァンスの一人の詩人からもらった
親身な忠告だけは、いまもしっかり覚えている。

  他の人たちを前にして、きみが自分ひとりに約束したことを、まもるがよい。それが、きみの契約である。

今晩、シャールと共にいることで、おそらく私は生きている。
まだ、言葉があることを信じて、生きている。

2008年の10月4日と5日の境い目に立ち、
しかと見るべきものを見ようと、私は生きている。
まだ、言葉があることを信じて、生きて、
少なくとも、長田氏よりは、多くのシャールの詩の啓示の予感に、
さらされた遠い日々と、2008年の10月半ばを思っている。

ケイコ
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