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かみあわない世界

日本で最初に、といってもいい時代に、「自閉症者」として、子ども時代を、学校という集団をどう生きたかを書いた森口奈緒美さんの、最初の本のタイトルは「変光星」、そして二冊目は「平行線」。

今日、延々とかみあわない、平行線の会話をした。いや、お互いによく知り合っているから、熟知していることもいっぱいある。だが、肝心かなめなところで、言葉がすれちがう。からみついて、よたついて、ねじれて、相手をなじる。あるいは、自身をすねる。

この相手は、私の半年に及ぶ闘病生活につきあって、疲れてもいる。そして、自分の「老い」の問題と向き合っていながらも、それを話す相手のいないことにじりじりしている。

誰もが言う。「ケイコちゃんは大丈夫。元気になった?」だけど、彼女の大変さ、この半年がほとんど三年といってもいいほどの密度で、彼女をいためつけたことを思い及ばず、問わない。彼女には問わない。

私もそれに耳を傾けたり、しんと向き合ったりという余裕は正直言ってない時間が続いた。今も、向き合える、と言える自信はないかもしれない。でも、そこをつかれれば、そこを見ることは始まる。本当は今に始まったことではない。余裕のないなりに、彼女のことは心配だった。彼女からの、私からの、それぞれへの心配や思いがぶつかり、ねじれ、衝突し、熾烈な言い争いがときに起こる。

仲の良い証拠ですか。いえ、人間の業ですよ。いや、老ろう介護の予行演習ですか。

朝ごはんから昼過ぎの鍼灸院への出発まで、周辺のウォーキングの時間も含めて、普通に穏やかに話した時間も含めて何時間かを費やした。答えなんて最初からない。彼女は出かける。

明るい空の下でまたしばらく、退屈でも日常的になったわが庭でのウォーキングを再開した。牛乳とビスケットを食べた。

それから、ふと二階に行って、のえの部屋に行き、あの日以来あけたこともなかった、そうけっしてあけられなかった骨壷をあけた。骨は白くて少し焼けていて、それはあの子の体のいちぶだった痕跡をかすかに残しつつ、それでも骨というただの物質として、粛然とそこにあった。

私は家族の中に、仲間を失った。少なくとも「自閉圏」という範疇でくくるとしたら、そして、そのアイデンティティが深く、鋭く、率直に、私自身を語り、のえをも語るとしたら、私は家族の中に仲間を失った。

出かけていった彼女は、そのことと深く関わった。だって、私とずっと生きてきたのだもの。
だって、のえを育てもしたのだもの。

そのことの尊さを私はこれっぽっちも否定しない。「定型発達」の人で、ここまで実感的に「自閉症スペクタル」に属し、その生きがたさや不器用さ、その感受性の特殊な豊かさ、才能の突出、ときには偏屈なまでのこだわりを、知っている人は、もしかしたらそう多くはいないかもしれないと思うから。いや、案外そういう人って多いかもしれないけど。

彼女が出かけたあと、のえを失った意味をかみしめた。四十歳に間もなかったはずの、のえ。悪意も他意もなく、人を傷つけてしまう直球の物言い。ゆらぐ自己肯定。底なしの自分の世界。天まで昇るような自分をこえた世界。

ああ、のえは本当に、天まで昇ってしまったんだね。もう一度昼下がりの外に出て、青空を仰ぎながら、私の大きな喪失まるごと、天を抱きしめた。

私を思いやってくれる、もと『ベロ亭』の「こども」たち。思いやることも、また、複雑な家族の世界。

それなのに、私は、家族を、というより、私たちを、私を、彼女を、そうヒデコを、頼ることはあっても、なかなか思いやれなかった、のえを今思う。家族の中の、ただ一人の仲間だったかもしれない、のえを。

かみあわないにもほどがある。これでも一生懸命あわせているんだよ。でも、遠い。

のえさんはねえ、ちょっと、うーむ、困るんだ。
そう言った人の気持ちもわからなくはない。

でも、その、のえこそ、私の仲間となりえた、同志となりえた、「自閉症スペクトラム度」37という人だったことを、かみしめる。
骨壷の冷たさにふれながら。

ケイコ




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| ベロ亭から | 16:57 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

山下恒夫の「反発達論」という本を知っていますか? 77年初版当時衝撃の本だったそうですが、25年ぶりに新装版として出たそうです。読んでみようと思っています。自死した親友が、大学在学中にこの本について書いたレポートが出てきました。発達の問題とからめて自己史を克明に綴ったもので胸をえぐられるようです。「直球の物言い・・・天まで昇るような自分をこえた世界」と同じ実感が綴られていました・・・

| けろたん | 2010/12/14 20:56 | URL |















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