PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

アールブリュットというパラドックス、ないしは矛盾 2

滋賀の「交差する魂」展で触れることができた作品の一つ一つをここに書いていたら、幾ら書いても、書ききれない気がします。私は、日本で「発見」された作品についても書くべきなのでしょうが、ここでは触れないことにします。

さて、その日、三月八日は、このアールブリュットの提唱者でもあり、スイスの「アールブリュット美術館」の館長でもある、リュシエンヌ・ペリーさんの講演が待ち受けていました。会場は、あの滋賀県知事の女性が言ったように、「なにかを必ずつかんで帰るという皆さんの異様な熱気」に確かに包まれていました。私もそんな熱気を発していた一人なのでしょう。

彼女の講演は、とても興味深く、洞察力に富み、たくさんの発見と示唆を与えてくれました。ただ、講演の間中、この話の内容には、決定的に何かが欠けている、という感覚がぬぐえませんでした。彼女が語るのは、徹底的に作品についてであり、その作品をめぐる作家の人物像の輪郭でした。

終盤、会場からの質問を受ける時間に入りました。三時間という講演時間の長さから、こういった時間が必ず用意されているのだろうと予測していた通りでした。

「美術教育を受けている者はこういった作品から何を学べばいいのか」
「リュシエンヌさんは、なせ゜アールブリュットという世界に入り込んだのか。そして、これから、日本で世界でどんなことを展開しようとしているのか」

「私はこの展覧会の意図と全く違うような、障害のある方に何か作品を作ってもらって、それが少しでも売れるといいと思って活動しているものですが」という前置きで語る人も
いました。

そのどれにも、彼女は実に丁寧に答えていきました。それは驚くべき真摯さでした。

そして、私はついに質問しました。
「何人かの作家の説明に書かれていた、突然の創作の中断、それも永久的な中断がどんな意味を持つか、リシュエンヌ館長に訊きたいのです。アールブリュットがアールブリュットである限り、こんな質問は成り立たないし、作品が作品であることが何よりもたいせつなのでしょうけれど、それをどうしても訊きたいのです」と。

彼女の回答は、実にそっけないものでした。
「どんなアーティストにも創作の中断というものはあるものです。それに、あなたは自分の詩作に価値がないと言っていますが、どんな創作にも価値があるのです。」
後半の回答は、通訳者が何か間違って付け加えたとしか思えないものでした。私は立ち上がって、もう一度、「価値がない、なんて一度も言っていません」と付け加えました。私自身の詩作の中断と重ねて語ったのは確かですが、通訳者が私の前置きを伝えなかったふしもありました。通訳者は、私の発言をそれ以上は、といった感じでさえぎりさえしました。

私の発言の間中、会場からはしきりとうなずきや、相槌があったのを、私は体の感覚で察知しました。多くの人が実は心から聞きたいことであったのだけは、間違いのないことでした。が、それについては、彼女はけっして答えない、というスタンスだけが確認できました。

深い失意が私を襲いました。それは悲しみとも、怒りともつかない、しみいるような、痛むような失意でした。

私の質問を最後に、お開きになった会場を去ろうと立ち上がったとき、いかにも繊細そうで物柔らかな表情をした知的な男性が話しかけてきました。
「本当にとてもいい質問だと思いました。皆さんが聞きたかったことではないでしょうか。でも、ヨーロッパでは人間よりも作品を見ることが中心なのだと思います。僕たちは人間を見ようとしているのですが」

わずかですが、救われました。去っていく彼の後姿を見ながら、どんな思いでここにいろいろな人が集ったのだろうかと、ひしひしと思いました。

このあと、思い続けたことについては、このテーマの3 で、あらためて記します。パラドックスはどう私の中に巣食ったか。その矛盾はどう、次へと私を突き動かしたのか。

けいこ






AUTHOR: けろたん DATE: 04/13/2008 21:49:28 続きを楽しみにしています。
スポンサーサイト

| ベロ亭から | 01:53 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://puentenokai.blog26.fc2.com/tb.php/462-b66548a8

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。