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《詩》 若さ かなしさ  永瀬清子 その時瀕死の力をこめて私を呼んでいたのに そして波のように私にぶつかりなぐさめられたかったのに……


《詩》 若さ かなしさ       永瀬清子

東京の小さい宿に私がいた時
あの人は電話をかけてきて下さった
あの人は病気で私に会いに来れないので
それで電話で話したかったのだ

かわいそうにあの人はもう立てない病気
それでどんにか私に会いたかったのだ
こんどはどうしても会えないよと
とても悲しそうに彼は云った

あの人は私よりずっと年上だし
学識のあるちゃんとした物判りのいい紳士
そんなに悲しい筈はないと若い私は思っていたのだ

過ぎゆく人間の悲しさを
私は思いもせずに
長く長く電話で話す彼に当惑さえしていた
そして片手の鉛筆で
何か線や波形を描いていた

枯れ葉のように人間は過ぎていく
その時瀕死の力をこめて私を呼んでいたのに
そして波のように私にぶつかりなぐさめられたかったのに……
「人間ってそんなものよ」「病気ってそんなものよ」

私はああ、恐ろしいほどのつめたさ
若さ、思いやりのなさ
そそり立つ岩さながら……

私を遠くからいつもみつめていたそのさびしい瞳に
それきりおお 私は二度と会うことはなかったのだ

永瀬清子さんの最後の詩集…と思われる…「あけがたにくる人よ」所収
1987年刊行  思潮社刊

2016年2月25日 午後7時にここに掲載  恵子
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