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南米の失踪者の、圧制下のルーマニアの沈黙が、長居公園の奪われたテント村が、奏でる吟遊詩

今日読んだ本、
新進のペルー系米国人作家、ダニエル・アラルコンの『ロスト・シティ・レディオ』の続き、
着いたばかりのヘルター・ミューラーの短編集『澱み』の中の最初の短編『弔辞』。

それから、何度も、多分4回聞いて、
音源の吟遊詩を全部言葉に起こした、「うたうたい のえ」の『かえりみち』、
2009年4月30日の長居公園での録音。

本当は、「のえと共に」のカテゴリーにしてもいいんだけれど、
のえの吟遊詩をむしろ、世界に輝く語り部として見たほうがよりふさわしいと、
カテゴリーは、少し前に、創った「文学の森にわけいる」にした。

私はあんまり日本文学は読まないほうだ。
偉そうなことは言えないかもしれないけれど、
どんなにうまくできていても、どんなに感動があっても、
日本のものって、最後に、読後に、じわじわっと、
「それで、どうなの、どうなのよー」って思いが突き上げることが多いんだ。

ダニエル・アラルコンは、
南米の、特に彼のルーツであるペルーの奥地の村々の失踪者から、
リアルで生々しくて、やさしくって残酷なモデルを得ているし、
そんな失踪者探しの番組が、首都のラジオ放送でいちばん人気があるってのは、
アルゼンチンがモデルだろうし、
まあ、南米の光と闇なんて、甘っちょろいことは言いたかないけれど、
そう、私もまざまざと知っている空気感だったり、
人の乾きや熱さだったりするから、
ああ、ここまで読んでいたの、すっかり忘れていたって、
続きを、またまた読んでいて、つりこまれて、つりこまれて…。

へルター・ミュラーはすごい、ものすごい。
『弔辞』には息を呑んだな。
残酷なグリム童話のようでもあり、
ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』なんかも彷彿とするけれど、
違う、やっぱりそれとは違う。
なかなかの鋼のような文体。
ちょっとやそっとじゃ、歯が立たないほど、
すごい言葉のつらなりだ。



そして、
そして、昼に、夕方に、夜に、深夜に、
言葉を起こした、のえの『かえりみち』。
あんたはいったいなにを見ていたんだ。
なにを、どれほど見てしまっていたのだ。
書き写すほどに息を呑む。息を呑んでいる。
3回目は泣いていた。4回目は冷静だった。
1回目と2回目は、鉛筆を走らせるのにただ集中。

のえが長居公園の野宿者のテント村の強制退去で、
いやいや、それ以前のテント村の「ふつうの日常」の中で見たものの、
あまりの大きさに、あまりのかけがえのなさにたちどまる。

あんたは、紛れもなく『吟遊詩人』だったんだ、
壮絶な、ありえないほどリアルな、直球の語り部だったんだ。


4回目の文字起こしの直後には、
たまらなくなって、あけてあるピアノのところに行って、
気づけば、のえの『ひとりぼっちの夜』を弾いていた。
自然と音をとっていたな。シンプルな曲。
それでも、音を取れたんだ、弾きたいあまりに…。
  
      ピアノは、最近の乾燥した空気にさらそうと、
      ふたはあけっぱなしにしている。




そんなことごとの合間には、
小さなガラスのコップに花を生けた。
庭でひろった、捨て置いてあったわりには、
立派なヒデコ作の水盤をきれいに洗って、
花をまたまた生けた。

おとといの敦賀で、
生けられていた花も花器もあまりにも悲しかったから、
やってみたくなった。


ルーマニアの一人も味方なんていない凍りついた時間が、
南米の失踪者たちを駆け抜ける絶望の刻一刻が、
のえの見た、長居公園の奇跡と苛烈な変貌ぶりが、
私の中で、脈打っている。
どれも、同じくらいの密度で、
どきんどきんと脈打っている。


朝は、ご飯もつくった。

片づけもした。洗い物もした。

そして、私は、南米と東欧と日本の闇の中で、
言葉という希望を探した人たちの、
希望なんかどこにもなくたって、
ないって事実を丹念に記憶した人たちの、
声をまざまざとも聞いている。

たった今も聞いている。


ケイコ

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